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先輩のファンの子達は、先輩が入場した時から泣いていた。
体育館には、すすり泣く声が響く。
重度のファンの子は一ヶ月前から、ことあるごとに泣いていた。
興味のない私は、正直、ウンザリしている。
よく廊下でスレ違い、取り巻きの女の子達が邪魔だった先輩が居なくなって、清々しているくらいだ。
欠伸を噛み締めながら、先生達を観察したり、泣いている女の子達を数えてみたりと暇を潰した。
ようやく、三年生が退場するころ、先輩のファン達の悲しみはピークに達したらしい。
少しでも先輩を間近に感じたいと思った女の子達が、通路側に一気に群がった。
ちょうど、通路側の端の席に座っていた私は彼女達に押され、潰され、引っ張っられ、もみくちゃにされた。
先輩のファンは、あれよあれよと押し寄せて、邪魔してないのに、邪魔しないでと誰かに言われた。
屈強な先生達が、人間バリケードを作るが意味をなさない。
ドンっと、肩に衝撃が走る。
私は、三年生が退場している真っ最中のど真ん中に、一人放り出された。
恥ずかしくて、不可抗力とはいえ卒業式を台無しにするのは、申し訳なくて直ぐに立ち上がろうとする。その時に、初めて先輩と目が合った。
先輩は手を引いて私を立たせてくれる。
紳士的だなと確かに思った。
「やっと、俺のこと見てくれた」
と嬉しそうな顔をしたのは、正直、意味が分からなかった。
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