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先輩は、そのまま私の手を取り肩を抱いて、一緒に退場させられ耳元で
「このまま保健室で話だけでも聞いて」
と言われ、わけも分からぬまま保健室へと私は連行された。
私は、確かに初めて先輩と顔を合わせたし、喋るのも初めてだ。私は先輩を知ってるけど、初対面。
なぜ、先輩が私を知っているような素振りをするのか、心当たりなんてまるでない。
膝の擦り傷の手当てを先輩にして貰いながら、話を聞いている。
どうやら私は二年間先輩に思われ続けていただとか、実は私を一目見たくて無理矢理でも廊下でスレ違っていたとか、目が合った時、私が目に涙を溜めていたことに期待を持ったとか、ハニカミながら話された。
ついでに、急に保健室に連れ込んだことも謝られた。
「最後になるなら邪魔されずに話したかったし、キミの怪我も気になったんだ」
モテる理由がやっと分かって、なるほどと密かに納得していた。
それにしても、涙の原因が欠伸だったことと、今現在進行形で先輩に惹かれていることをこれからどう伝えたらいいのだろうか。
私は、ぼんやりした頭で考えだす。
これが私達の出会いだ。
今日は、私の卒業式。
あの日を思い出すと笑ってしまう。
きっと、先輩も笑って校門の前で私を待っていることだろう。
なんて、恋人に甘い彼氏なんだと、先輩のハニカム笑顔がすぐ想像できた。
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