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第1章 小さな桜の木。
晴れた3月の下旬、咲いた桜の木……。
この桜の木は小さくて他の見事に咲いた桜のように近くで宴会なんてしている人は居なかった。
その上何故か大きな公園なのに……雑木林のようなところにひっそりと存在して、まるで隠れて咲いた桜のように感じた。
「何だか……少し淋しそうですね」
叶はこの小さな桜を見て言った。
「そうかな」
俺はそうは思わない。
こいつはひょっとしたら誰も知られないところでひっそりと咲いていたいんじゃないかな、ふとそう思った。
「杉原先輩は、一人で一生懸命咲いているのに…誰も見てくれない桜は可哀想だとは思いませんか?」
「思わないよ」
俺はハッキリとそう言った。
俺がそう言ったら、叶は何だか悲しそうな表情になった。
「先輩、今日は何時もと少し違う気がします」
「………そうかな?」
「はい、何だか……少しだけ怖いで……っ」
俺は叶が言葉を最後まで言わせない早さで腕を引き、そのまま草の上に押し倒した。
「!!……せっせんぱい?」
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