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放たれる②
「――ここにいるよ」
学校の屋上。
ここから見る街の眺めは、なんだか知らないべつの場所のように思えた。
遠く西の空はまるでカルシウムの炎色反応みたいに、鮮やかなオレンジ色に染まっていた。三月の肌寒い風が髪をなでる。知らない街の知らない地平線が、はっきりと私と世界とを分かつ。
今日は卒業式の日。高校生活最後の日。
巣立ち行く若者たちが、限りのない真っ白な「自由」と、覚悟と責任という「制約」を手にした日。
遠い惑星に迷い込んだみたいに静かだった。卒業式も終わり、お互いの門出を祝い合う生徒たちの騒ぎ声が、惑星の大気のいちばん外側をなでるように響く。ぜんぶ他人事だ。私にとってはぜんぶ無関係だ。あるいはその逆か。この惑星にひとりぼっちでいる私のことなんか、世界にとっては関係のない他人事なんだ。
そう、世界は私とは無関係。私が胸のなかにどんな想いを秘めていようと、一分一秒違わず、世界は回り続けている。
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