1.変な女神

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「さぁ、何が欲しい?」 彼女は、俺の肩を掴み、体を寄せ、耳元で問いかける。 俺には欲しいものなんてない。あるのは後悔だけ。このつまんねぇ世界で培ったバカみたいな後悔だ。 だから 「…別に、欲しいもんなんてねぇよ。欲しいもんなんて、頑張れば手に入れられるから、お前からもらうもんなんて無い」 俺はあえて、この女神を突き放すように、そう言った。 だけど女神は食い下がる。 「君の持つ後悔、それも、君が頑張ればどうにかできるの?」 「…」 この女神は人の心が読める能力でも持っているのだろうか。女神なんなら、それくらいの力、持っているのかもしれない。 そうでなければ、どうしてこうも、俺の心を簡単に見透かしてしまうのだろうか。気味が悪いほどに俺のほしい言葉を投げかける。 だけど、俺はアレから逃げてもいいのだろうか。 あの時のあいつの憎しみから逃げても、許されるのだろうか。 「いつまでも君を苦しめるあの日の記憶、あの女の記憶。彼女は君を恨んでいたようだね。でも、あれは昔のことだよ。君を恨んだ彼女はもういない。…なのに、なんで君は忘れられてないの?」 どうしてかなんてわからない。 ただ、忘れちゃいけない気がするから、ずっと忘れられないでいる。 「ずーっと、苦しいままでいいの?」 … 「過去のことを、忘れたい」 「…なら、私はあなたに何を与えればいい?」 俺は息を吸い、レイナの金色の瞳を見つめる。そして、ひどく楽しげなその目に願う。 「俺を、逃してくれ。どこでもいいから、あいつのことを忘れられる場所に」
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