1.変な女神

9/11
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
数秒の沈黙。 俺の目線の先……レイナの目は、ゆっくり細められる。 「ふふっ。いーよ」 彼女は満足げに薄く笑った。 「君は自分の欲に忠実じゃないらしいから、言葉が足りないね。でもいいよ。私が勝手に解釈して、お望み通り逃してあげる。」 「言葉が、足りない…?」 「ねぇ、過去があるから、今があるんだよ?」 耳元で囁く彼女は、俺の手を掴み、俺の目を覆うように動かす。 「ただの人間が、過去から逃げる方法なんて一つしかないじゃない」 「なにを…っ!?」 首元に痛みのようなものを感じ、俺の意識は薄れていく。 「ばーか」 最後に、そう言って笑う女神の顔が見えた気がした。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!