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数秒の沈黙。
俺の目線の先……レイナの目は、ゆっくり細められる。
「ふふっ。いーよ」
彼女は満足げに薄く笑った。
「君は自分の欲に忠実じゃないらしいから、言葉が足りないね。でもいいよ。私が勝手に解釈して、お望み通り逃してあげる。」
「言葉が、足りない…?」
「ねぇ、過去があるから、今があるんだよ?」
耳元で囁く彼女は、俺の手を掴み、俺の目を覆うように動かす。
「ただの人間が、過去から逃げる方法なんて一つしかないじゃない」
「なにを…っ!?」
首元に痛みのようなものを感じ、俺の意識は薄れていく。
「ばーか」
最後に、そう言って笑う女神の顔が見えた気がした。
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