1.夏色(1)

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 ぐわあああと頭を抱えて吠える様をあわてて抑え、退院してもできれば安静にでしょ、と柚葉が苦笑した。 「そんなことないよ。彩香、可愛い」 「うっ……か、可愛くなんか……」  ないけどさ……と心の声で締めくくり、照れ隠しにあたふたとシャーペンを仕舞った。  やはりダメだ。  最近自分が自分ではないようで……謎の何かに変化しつつあるようで、どうも落ち着かない。  この先を想像すると――――いや想像できないからか。  何か、怖い気がしてならないのだ。  ダメだダメだと思っても、一体どこまであのヒトを好きになってしまうんだろう……。   「可愛いんだけど。でも……ソレやっぱり痛々しいよ。ちょっとでも隠したほうが……よくない?」  おそるおそるといった体で柚葉が左のこめかみを指してきた。
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