1.夏色(1)

12/21
前へ
/301ページ
次へ
「うーっわ、想像を遥かに超えたブス!」  この十日間、会いたくてたまらなかったヒトが、そこに居た。  白シャツ、グレーズボンにネイビータイ。  薄手のアイボリーベストは、シャツを巻き込んで肘下でざっくりと折り返されている。    わざとらしく驚いてみせた後、一気に相好を崩して高い位置から見下ろしてくる早杉翔の姿に、嬉しさと気恥ずかしさが信じられないくらい込み上げてきて……焦った。  「ひ、ひっっどい! い、いきなりそれっ!?」  めいっぱい抗議しながらも、大丈夫だろうか変に赤くなってないだろうか……などと心穏やかではなくなっている自分にまず驚いた。  まともにブスと言われたことも、なぜかまったくと言っていいほど気にならない。
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加