1.夏色(1)

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 ◇ ◇ ◇  「でも本当に良かった……。それくらいで済んで」  クラスメイトたちや顔見知りからの「ハイジャンで変に落ちたって?」や「ヤンキーの喧嘩に巻き込まれたって噂ホント!?」という類のいい加減な質問もだいぶ躱し慣れてきた昼休み。  少しだけ薄くなってきたこめかみの青アザを眺めながら、向かいに座る大和撫子がしみじみとつぶやいた。 「柚葉それ、もう耳にタコ……」 「だって! 本当に心配したんだから!」  ダンッと机にお茶のペットボトルを叩きつけて怒りをあらわにする親友から、とっさに逃げ出したくなってしまった。 「あ……は、ハイ。そうでしたね、す、スイマセン本当に……」  でも単身で見舞いに来てくれた時から数えてソレ何回目?……とは口が裂けても言えない。
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