1.夏色(1)

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 柚葉には心底怖い思いをさせ、大泣きさせ、これでもかというほど心配かけてしまったのだ。  欠席分の授業ノートもしっかりもらったし。    以後頭が上がらないかもしれない。  こうした彼女の心配も痛いほどわかっていたし、様子が気になる人や会いたい人もいたため、本当ならすぐにでも登校したかった。  のだが……。  「二、三日は自宅で様子見たほうがいいですね」という医者の言い付けを忠実に(必要以上に)守った両親の意向により、結局退院後初の登校は事件からまるまる十日経った本日――月曜日と相成ったのである。  項垂れる彩香の目に映る久々の学舎では、みんなすっかりブレザーを脱ぎ捨て、白ワイシャツ白ブラウス時々アイボリーベストという夏色の様相を呈していた。
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