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入浴剤2種類目
初めは、キラがもう来てくれないのではないかと凹みに凹んだ。
けれど次の満月の夜、キラはまた逢いに来てくれた。
次の満月の夜も、その次の満月の夜も。
どうやらキラに逢える条件は、
①満月の夜
②深夜0時まで
ということらしい。
他の日は全く逢えなかったし、0時なるとすぐに消えてしまう。
満月の日に会社を休んで一日中浴室に張り込んだ事があるが、昼間は逢えなかった。
夜も決まった時間に逢いに来てくれるというわけではなさそうだった。
湯船に浸かって極楽モードに入ると、キラが現れる気がする。
私もキラも、逢って話す(鼻を鳴らす)以外の事はしなかった。
私はキラに話掛け、キラはその場で鼻を鳴らすだけ。
微動だにしないというわけではないが、キラはドアの前から動こうとはしなかった。
うさぎは本来水が苦手で、犬や猫と違って風呂に入れてはいけない。体が汚れたら自分で毛繕いをするし、人間が手入れをするならほどよく温めたタオルで拭いてやるのがベターだ。
ブラッシングは必須だったが、小さな体だ、苦になる事などなかった。
水が苦手なうさぎが湯気にあたって大丈夫かと心配になる事が少しあった。
けれど今夜もやって来たキラに、私は微笑んだ。
満月の夜は月との道を繋ぐ扉でも開くのだろうか?
キラが亡くなった時に、「お月様へと旅立ったうさぎは、月で元気にお餅を付いている。」とひたすら自分に言い聞かせた。
満月を見上げた時には、月にうさぎが餅を付く姿が浮かびあがっている様に見えた。
「あっ、まさか月で強制労働なんてさせられてないでしょうね?」
私は本気で言った。
私が必死で働いて、キラが必死で働いて、そのご褒美がこの逢瀬なのだろうか。
お互い、満月の夜に一度だけ。
でもそれも悪くなかった。「お互い、とんだ社畜だね。」と言うと、キラは鼻を「ぐっ。」と鳴らした。
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