満月の夜だけ

入浴剤３種類目

キラが我が家にやって来てから数日間が過ぎた頃、致し方なくキラをお風呂に入れる事になった。

キラが来てから、父のくしゃみが止まらなくなってしまったのだ。
何かの加減ではと私は反対したが、キラがいた環境を考えると菌類かもしれないと母が言い出し、私の意見を聞かなかった。「何も湯船に浸けるわけじゃなくて、お湯を張った桶で少し洗うだけよ。」と母は言ったが、お湯に浸ける事に変わりはなかった。

いざキラを洗うとき、ゆっくり桶のお湯に慣らしながら入れるのかと思いきや、母が躊躇なくぽちゃん、とキラを桶に入れてしまった。

私もキラもびっくりだった。

私は慌ててキラを桶から出し、目にも止まらぬ早さで洗い、ゆっくりお湯で泡を流してタオルで包んだ。
本当は母に文句の一つや二つ言ってやりたかったが、それどころではなかった。

「…もしかして、あの時の事根に持ってるの？」

もくもくと湯気が漂う中、私は苦笑いしながらキラに言った。