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入浴剤4種類目
事件は突然起こった。
脳ドックの検査を受けた父が、結果が出る直前に脳梗塞で倒れたのだ。
倒れた場所は浴室、倒れた際に頭を強く打ち、打ち付けたと思われる場所がいつもキラが佇んでいた浴室のドア付近の床だった。
父は緊急搬送されたが、一命はとりとめた。
けれど、油断はできない日々が続いた。
そして満月の晩、父は再び危篤状態となった。
「キラ、どうしよう。」
私は涙声で言った。
母は病院で父に付き添ったが、私は一時的に家に帰された。「お風呂にでも入って、少し落ち付いてきなさい。」と母に言われていた。
-もしかして、お父さんを迎えに来ていたの?
私は心の中で呟いた。声に出したら現実になってしまうかと思ったからだ。
「お願い、お父さんを連れて行かないで、お願い…。」
私は泣きながらキラに訴えた。
キラはいつもの様に「ぐっ。」と鼻を鳴らすと、今日は0時になる前に消えてしまった。
0時になる前に消えてしまうなど、初めての事だった。
キラが消えてから数十分後、キラも消えてしまい不安の真っ只中にいた私に、深夜0時の少し前に母から連絡が入った。
「お父さん助かったよ…!」と。
私は歓喜の余り泣きだし、母も電話越しに泣いていた。
その後の事は余り覚えていないが、キラが時間より早く消えてしまった事が気掛かりだった。
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