9人が本棚に入れています
本棚に追加
入浴剤5種類目
父の一件以来、キラは二度と姿を見せる事はなかった。
初めは父を迎えに来たのかと疑った事に腹を立ててしまったのかと思っていた。
しかし、私の中で全く別の仮説が出来上がった。
おそらくキラは、月とこちら側を繋ぐ道への扉を永遠に閉じたのだ。
最後の満月の夜、キラが消えた後に父は助かった。
そして、キラが逢いに来た時必ず佇んでいた場所は危険だと知らせに来てくれていたのではないだろうか。
キラは私の願い通り父を助け、その対価を私の代わりに支払ったのだ。
今日もまた、満月の夜がやって来た。
そこにキラの姿はない。
私はいつもキラがいた場所を見つめた。「ぐぅ。」と鼻を鳴らすキラが、微かに見えた気がした。
湯船に浸かりながら、私はキラとの日々を振り返っていた。
最初のコメントを投稿しよう!