好きだから言えないこと

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「はい、告白です」  真っすぐな後輩の言葉に、私は思わずため息をついた。 「……名前、なんだっけ。真面目な話をしたいから教えてくれない?」 「あ、すみません。僕はホタルって言います」 「そう、私はアカリ。ホタル君。あなた、ヒカルに告白するリスクはちゃんと考えてる?」 「リスク、ですか?」  目を丸くするホタルに私はリスクを指摘する。 「まずヒカルはホタル君のことを知らないわけよね」 「ええ。そうですね。病室から覗いていた僕の姿が見えていなければ……」 「……まあ、見えてはいたんだけど。現に私はホタル君の姿を見たことがあるし」 「初耳です! 恥ずかしいですね!」 「存分に恥ずかしがって頂戴。あなたの姿は完全に不審者だったから」 「ええ……ごめんなさい」  肩を落とすホタル。私は続ける。 「私は人よりも周りを見る癖で知っていたけれど、ヒカルは多分あなたを知らないわ。せいぜいが名前を聞いたことがあるくらいよ。知らない人から告白された時、大抵の人は嫌がるわ。だって、その人は自分のことを何も知らないで好きになったと言っているのだから。狂気の所業よね」 「……でも、僕は」 「確かにホタル君は他の人よりはヒカルを知っているかもしれない。それを伝えられれば、少なくても外見だけに惚れたわけじゃないことは分かるでしょうね。まあ、そんなことよりも一番の問題はホタル君が既にこの世に居ないことよ」 「……」 「告白された相手にどんな感情を抱いていても、答えは返さなくてはいけないわ。どの感情であったとしても、幽霊に返す返事なんて誰も考えたことは無いでしょうね。その負担を考えたことはある?」 「負担、ですか」 「ええ。負担。知らなくてもよかった思いを知ることは大きな負担よ。どうやったって知らなかった過去には戻れないもの。ヒカルは優しいから、ホタル君を忘れられなくなってしまうでしょうね。それはホタル君にとって本望かもしれないけれど、ヒカルにとって重荷になることくらいは想像できるでしょう?」  私は一呼吸置いてホタルに問いかけた。 「それでも、ホタル君はヒカルに告白をするの?」
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