好きだから言えないこと

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「――ヒカルさんが大好きでした。ヒカルさんの笑顔に救われていました。もし叶うなら、ヒカルさんと一緒に生きたかった」 「私も、ホタル君が生きていたら、一緒に生きてみたかった。――どうしてもう居ないんだろう。どうしてもう一緒に生きれないんだろう、って思っていたの。一度だけでもこうして話せて本当に嬉しかった」  僕が抱えていた想いを吐き出し終えて、ヒカルさんはそう言った。どうやらヒカルさんは予想以上に僕のことを知ってくれていたようだった。  ああ、満足だ。こんなに幸せなことは無い。  満ち足りた気持ちで身体の主導権をアカリに返そうとしたところで、声が聞こえた。 (こんなことで満足なの? ホタル君) 「――え?」  次の瞬間、僕の口――いや、アカリさんの口からとんでも無い言葉が溢れた。 「ヒカルさん、すみません。最後の土産に抱きしめても良いですか?」 「……ええ」  ヒカルは少し戸惑ってからマフラーを置いて席を立ち、アカリの隣に座った。そのヒカルを抱きしめて、アカリは言った。 「本当に好きでした、ヒカルさん」 「……ありがとう。好きでいてくれて」  ファミレスでのやり取りはこれで終わった。 「どうしてあんなことをしたんですか? アカリさん」  アカリの自宅に帰り、僕はアカリに尋ねた。 「まだ居たの? 約束はどうなったのかしら?」 「――守れません。教えてもらうまでは」  アカリは諦めたように言った。 「……別れのハグくらい良いじゃない。あなたも役得だったでしょう?」 「それは否定しませんが、なぜアカリさんがそんなことを」 「なぜって、決まっているでしょう? 私がヒカルを好きだからよ。親友としてではなく、恋愛対象として」  当たり前のように言うアカリの言葉に僕は戸惑った。 「どう思ったかしら? ホタル君」 「どうって、そういう人も居ることは知っているから別に……」 「別に? その続きは気になるけれど、別にホタル君からどう思われようがどうでもいいわ。ただ、ヒカルが知れば、きっと私との間に越えられない線を引くでしょうね。それは偏見による差別ではなく、単純に恋愛対象ではない相手へのごく自然な対処法だもの。絶望的よね。だから、私はホタル君を利用したの」 「……」 「ホタル君が告白する時なら、私も告白できるだろうって」
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