きのこ雲

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 学生時代から、飲み会参加は義理だった。  末席で俯き、膝に隠した携帯で時刻を確認しながら、あと何分の我慢だと自分に言い聞かせつつお開きを待つ。  気遣いの人もいて、飲めないわたしにあれこれ話しかけてくれたりもするが、返っていたたまれなくなる。頼むから、放っておいて、見ないふりをしていてくれないものかと心から思う。  宴会の飲み放題コースだって、百害あって一利なし。  あんなもん、元が取れるほど飲めるわけがない。  宴会に参加する人みんなが飲みたい訳じゃない。ソフトドリンクは飲み放題の料金からは外れている。だいたいの女は、ウーロン茶飲みながら飯食って、旦那の愚痴を喋りたい。カッパラカッパラ、阿呆みたいに飲みたいのは、ごく限られた人間なんだよ。大抵の場合。  安上りに見えて、実はそうじゃない、飲み放題。  二次会に至っては、何のために存在するのかと思う。  酔っぱらいが大声で騒ぎながら夜道を歩いてお店に向かう、そのこと自体が社会の迷惑。  酔いどれ連中にしたって、飲んだ分のお金は飛んで行くし、翌日のコンディションだって良いわけがない。    (宴会、この悪魔のような風習)  遙か古来から行われて来た、宴会という習わし。  めでたかろうと、そうでなかろうと、ことあるごとに集まって飲み食いして済ます。もういいじゃないか――わたしは心から思う――花が咲いたからといって、どうして宴会をしなくちゃならないのか。
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