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裸族もどきは毎年出没するが、全部脱ぐ前に宴がお開きになるものだ。
ぐったりと悪酔いしたおっさんをかついで、悲しそうな顔をした部下が駅まで送ってゆく。その姿も桜の時期の風物詩。
(今年は、おっさん脱ぐな)
予感がする。
いつもなら、アンダーシャツになったあたりで盛り上がりのピークが過ぎ、おっさんダウンして連れ帰られる。
だが今年は、いつまでたっても宴が終わらぬ。
真っ暗な闇夜の下で、ぼうっと灯る提灯が揺れており、公園のぐるりと囲む桜の木々はいよいよ咲き誇る。
僅かに桃色を含んだ白い花弁は、それ自体が発光しているようだ。
夜闇に入道雲のような花枝を広げ、ほろほろと白い花びらを落とす様は、じっと見ていると何かに憑りつかれそうなほどだ。
花弁がちらちらと舞う中で、公園の宴会はいよいよ凄まじい様相を呈してくる。
気付けば、脱ぎながら走り回るランニング裸族の数が増えていた。
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