きのこ雲

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 (シラフの人は、存在するのか)  じっとりと手に汗がにじみ出る。  悪酔いするのを承知で飲んでしまえばよかった。そうすれば、ここまでいたたまれない想いはしなかったかもしれぬ。  いい加減時間が来ても良い頃だ。  そっと携帯を取り出してみる。  午前0時に、終電の時間を言い訳に退席する予定である。  「0時まではいろよ」  と、わたしの宴会嫌いを承知している職場の連中は、毎回きつく念を押すのだ。  その0時にまだならぬ。  デジタル表示は、23時59分。  それにしても長い1分だ。永久に続くようである。  (さっき見た時も、23時59分だった……)    わたしは仕方なく、他の事を考えようとした。  気を紛らわすために考えることといったら、仕事のこと。  昨日はあの仕事をして、今日はこれを片づけて、明日はあの段取りで仕事をする。そうしたら、誰それさんに助けてもらって、ナントカ部長に取引先に連絡をしてもらう。  あの仕事の納期はいつだったか。  (あれ)  具体的な日時まで思考が及んだ時、わたしは愕然とした。  おかしいな。おかしい。えっと……。  今日は、何月何日だった。  思い出す。  ブルーシートで場所取りをした朝。あれは何年の何月何日だった。  駄目だ。脳みそのある部分が真っ白になっていて、あるラインから先の事を思い出すことができない。    時間が、止まっている。
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