せめて……

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満開に咲き誇る桜並木、男はひとりで歩いていた。彼は何故だかスーツを着て。 早朝だからか、人はいない。 「あった……。久しぶりだね……」 男は一番小さな桜の木に語りかける。 一年前、この小さな桜の木の下で悲劇が起きた。 男の恋人が無残な姿になって発見されたのだ。 男は木の根元に腰をかけると、懐から拳銃を取り出した。 「手に入れるのに時間かかっちゃってさ……。遅くなってごめんね?今行くから……」 男はこめかみに銃口を当てる。 「愛死テル……」 男はそう呟き、引き金を引いた。 パアンッという乾いた音が、誰もいない桜並木に響き渡る。 ダラりと垂れた男の手から拳銃が落ちる。 こめかみから血を流した男は、幸せそうに笑って眠った。
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