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実を言えば、1年前の私の成績では、この高校に入学するなんて天地がひっくり返っても無理と言われるくらい無謀な挑戦だった。
最初に受けた模試では当たり前にE判定。
それでも私は、志望校を変えずにひたすら勉強した。
……だってこの高校には、先輩がいるから。
先輩がいると思えば、嫌いな勉強も頑張れた。
寝る間も惜しんで勉強して、親に頭を下げて塾にも通わせてもらった。
そしてようやく努力が実を結び、今日私は晴れてこの高校の門をくぐることができたのだ。
なのに。言えなかった。
入学の報告だけして、他には何も、言えなかった。
恥ずかしさと居たたまれなさから一心に走り、自分の教室に戻ろうと階段に差し掛かったところで、私は突然腕を掴まれた。
振り返るとそこには、さっき別れたを告げたはずの先輩がいる。
「せん…ぱい?」
掴まれた腕と、目の前の先輩と、その光景はとても信じられないものだった。
走ったことによって早まった動悸と相まって、心臓がドクンと跳ね上がる。
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