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驚いたけれど、言われてみれば確かにその通りだ。
中学時代、先輩と私は一緒に生徒会役員をやっていた。人望の厚い先輩は生徒会長で、私は書記。
そういう繋がりだったのだから、先輩と同期の他の先輩からでも、私と同期の子からでも、私の入学試験の結果なんていくらでも知ることができる。
「百合岡から直接合格報告してくれると思って待ってたのに、春休み中は一向に連絡くれないし。だからちょっといじわるした。…あんなダッシュで走り去るとは思わなかったけど」
さっきの私の脱兎っぷりを思い出し、先輩はくすっと笑う。
先輩に笑われるなんて、すごく恥ずかしい。
またこの場を逃げ去りたいくらいだ。
でも今度は逃げない。先輩に聞きたいことがある。
ぎゅっと拳を握り、勇気を出して聞く。
「それで、追いかけてきてくれたんですか?約束のために?」
「うん」
嬉しい。
いの一番にそう思った。
追いかけてきてくれたことも、約束を果たしてくれたことも、すべてが嬉しい。
幸せすぎて、思いが溢れてくる。
「……好きです」
唐突に、その言葉が口から出ていた。
ポツリと呟くように小さな声だったけど、この距離だから先輩にも届いたはずだ。
自分でも思いがけない告白。先輩も、虚を衝かれたような表情をしている。
さっき私が目の前に登場して見せたときと同じ表情。
あれは演技だったみたいだけど、今見せているのはきっと、本当の表情。
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