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「……ふ……」
──この言葉は……
けっこう、来る……。
「……ふ……うっ……」
誰もいない教室で、卒業式の日に、あたしは一人で泣いた。名前も知らない、下級生の小さな言葉で。
ああ……そっか……。
あたし、卒業したんだ。
こんなあたしでも、送り出してくれる。
そんな何気ない小さな一言が、ポンと軽く背中を押してくれた。
卒業して新しい生活が始まったら──次こそは、笑える日々を過ごすんだ。無為に過ぎる日々に押し流されちゃダメだ。
今度こそ、自分自身に色をつけたい。
──卒業、おめでとう──
「──ありがとう……」
彼に返せなかった言葉を、ひっそりと呟いた。
時計は10時過ぎを差していた。そろそろ、卒業式が終わる。
最初で最後に染まった、あたしだけの一大行事が──……。
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