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3.春はピンク色で
四月中旬。
桜も散り始め、お花見シーズンも一段落ついた頃。
あたしは、休みの日に駅前をブラブラしていた。
相変わらず髪はピンクで、今日も美容院に行ってカラーを整えてもらって、髪型も顎までのボブからショートに切ったばかりだった。
この春から大学に通い始めたあたしは、すぐに友達ができた。何せこのピンク色の頭だし、けっこう目立つのだそう。
アングラ系かと思えば案外普通で、そのギャップが面白いとも言われた。
大学は視野の広い人がいっぱいいて、高校の時の教室みたいな閉塞感がない。
そんな環境で人と接し、あたしは心の底から笑えるようになった。
天気のいい午後、ふと桜並木を歩く。
満開の桜も綺麗だけど、この散り際の桜も綺麗。
そう思いながら歩いていた、その時──。
「ピンク先輩!」
何それ、と思いながらピンクという単語に思わず振り向くと──。
「あ」
卒業式の日に会った、下級生の彼がいた。
制服姿で自転車に乗る彼は、あたしの傍らに来て自転車をとめた。
「すぐ先輩だってわかりましたよ。すげぇ、会えると思わなかった」
相変わらず、人のよさそうな顔で笑う。
(……てゆーか「ピンク先輩」って)
心の中で含み笑いをしながら、「久しぶり」と返事をした。
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