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「──あっ」
突然、男の子の声が聞こえた。
腕枕したまま声がした廊下の方をゆるりと振り向くと、一人の男子が開けっ放しのドアの所に立っているのが見えた。
──誰だろう。
視力の悪いあたしは、机に伏した状態で目を細めてじいっと見つめる。
その人は扉に手をついて、驚いているような呆気にとられているような──そんな表情を浮かべているように見えた。
「……あ、えと、すいません、でした……」
男子はそう一言だけ告げて、控えめな足音を鳴らして歩み去っていった。
「…………」
──何?
てゆーか……。
あたしが言えることじゃないけど、卒業式の真っ最中に何で生徒が校舎にいるの?
あたしは上体を起こして、眉間に皺を寄せた。
全員参加がお決まりの卒業式に於いて、まず卒業生が(私という例外を除いて)校舎にいるはずはない。
──となると、下級生?
でも、卒業式に参加する吹奏楽部や生徒会役員以外の下級生は休みのはずなのに……。
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