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大きく息を吐き、もう一度――股間に触れる。
「あはは……っ、サルマキス、そういうことかよ――」
サルマキスの返事はなかった。
シートに突っ伏す。
俺は――女になっていた。
◆◇◆◇◆◇
その日の夜――俺はふと目が醒めて、自室を出た。
携帯端末片手にトイレへ行く。女子として高校に通うことになって、女子トイレに入るのも、トイレの仕方も、すっかり慣れてしまっていた。
まして、昼間の戦闘で俺はついに――辛うじて外に残っていた男の部分を失った。
ため息をつきながら用を足す。
戦闘後のメディカルチェックですぐに体のことは知られた。
真子には「精霊と人のバランスを考えると、戻る可能性はなくはないわ」と微妙な言い方でフォローのように言われたが、今も戻っていない。
個室を出る。
女子トイレの鏡は男子のより大きく綺麗だ。
鏡も、見るようになった。
鏡の中の自分と手を合わせる。胸元まで映っていて、少し屈むと寝間着にしているTシャツの下の夜用ブラまで見える。
「女に、か……」
そう呟いた時――かたん、と微かな物音がした。
トイレの外だ。
小さな足音がトイレの前を通り過ぎてゆく。
俺は音を立てないようにこっそりトイレのドアを開ける。
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