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そう言って梨香は腰を上げて窓辺に向かう。
俺より背が高そうだ。
入ってきたのは、梨香の着ているものとは長さと形の違う白衣を羽織った女だった。
厚いメガネと伸びっぱなしのような長い髪が野暮ったい、やっぱり身長のある女だ。
大きめの端末を持った女は俺を見て、ふわっとした微笑みを浮かべる。
「死の淵からの生還、ってやつね」
軽い言い方だな。死にたくて事故ったわけじゃないし、こうして意識を取り戻せたことには感謝の気持ちも湧かなくはないが、軽口を向けられることは好きではない。
ぐっとふくらんだ胸元にある名札を見ると『井門理真子』とあった。
「ここは、どこなんだ?」
梨香にはぐらかされた質問をもう一度投げる。
真子――で、いいのか?――は梨香に目配せをしてから、俺に言う。
「起きられそう?」
「んっ――」
上体を起こそうとするが、力が入らない。それでも何とか起き上がり、腰を回してベッドに座る格好になる。
髪が肩にかかる。脱色していた部分とでツートンになっていた。
こんなに伸びるなんて、俺はどれくらい寝てたんだ――
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