58人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ、侑叶くん。さっきのも含めて知りたいことは答えられる範囲でその都度答えるけど、基本的には君はここで自由にしてていい――その時が来るまで、ね」
彼女はそう言って、メガネの端を少し触る。
「まずはそうね――立てる? それなら、自分の目で見たほうがいいわ」
俺がベッドから降りようとすると、彼女が手助けをしてくれた。どれほど眠っていたのか、俺は体が思い通りにならない違和感を覚えつつも自分の足で立つ。
手術着のようなものを着せられていた。ぺたぺた触って体を確かめると、すっかり筋肉が落ちて自分の体じゃないように痩せきっていた。
足は治りきってないのか、歩きにくくて転びそうになるのを、彼女に支えられる。
その体勢のままヨロヨロと窓際まで行く。
「――へっ?」
変な声が出た。
窓の向こうには、鮮やかな青空が広がっていた。下を見ると何か建物――この部屋も含めてそれほど高くない棟がいくつか並び、その向こうにはこっちもやたら綺麗な青い海が見えた。
どう見ても都内じゃない。いつも放り込まれる病院は都心じゃないけど、それでも住宅地とかビルとか電車は窓から見える。
そんなものも何もないここは――
最初のコメントを投稿しよう!