58人が本棚に入れています
本棚に追加
「ど、どこなんだ、ここ……」
ほとんど呆然として呟いたのを梨香が拾う。
「西之島だよ」
「島? 都内の病院じゃないのか?」
「住所的には都内なんだけどね」
真子がベッドの傍から丸椅子を持ってきて俺を座らせた。彼女自身は窓際にもたれたため、窓の正面の俺を真ん中に、自分より長身の女二人に左右挟まれた格好になる。
「東京都小笠原村、西之島。あと、ここは病院じゃないわ」
さっきの端末を見せられる。「ここ」と地図で示されたのは太平洋のど真ん中で、状況把握が追いつかなくて「どういうことだよ……」とこぼすばかりの俺に告げた真子の次の言葉は、また理解するのにしばらく時間のかかるものだった。
「侑叶くん、君はね――死んだの」
「はぁ?」
これが死後の世界だとしたら――何というか、バカバカしい。
真子が俺の怪訝な表情を見て苦笑する。
梨香はというと、説明は彼女に任せた様子で、電子煙草から細い煙を吐きはじめていた。
俺が「タバコ、俺にもくれよ」とぼそっと言うと、梨香はその赤い光を俺に向けた。
「駄目だ」
真子がふっと笑い声を漏らして、説明を続ける。
最初のコメントを投稿しよう!