Happy Bath Time

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 今、浴室は窓が閉め切られ、白く生暖かい湯気で充満している。浴槽は脚を伸ばせる位の長さになっていて、ストライキを起こした私の脚もちゃんと満足してくれている。旅行ばかり行って脚を酷使している私の脚は、夏を過ぎた頃からストライキを起こすことを覚えた。私の脚を唯一説得できるのは、このお風呂だけで、「ご飯」も「マッサージ」も通用しない。 「旅行帰りのお風呂は、格別なり」  脚が言葉を発するならば、きっとそう言うだろう。  今、私は四十二度のお風呂に肩まで浸かって入っている。これは私なりの冬のお風呂の入り方だ。お母さんは風呂を四十度に設定してお風呂を沸かしてくれていたけれど、わざと四十二度に上げて追い炊きしている。体に悪いというのは何となく分かっている。でも、止められない。寒さで凍えた体を肩まで熱いお風呂に浸けて、白く立ち上る湯気を眺めながら、のぼせるまでじっとしているのが堪らない。  お湯に浸かりながら、今日が二月の終わりだと言うことを思い出した。旅行をしていると、「何泊何日」ということばかりが気になって、日付の感覚が狂ってくる。  二月、と言うことは、私が会社と世の中の何もかもが嫌になって、そこから逃げるように何度も旅に発つようになってから、もうすぐ二年になるということだ。     
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