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いつもと同じ、朝が来る。
身動きの取れない私は、出来る限り手を伸ばしてリモコンを手にする。
テレビを付ければ朝の五時。
…まだ彼が起きてくるまで一時間もある。
一時間、このままか。
もう少しだけ背中のコンセントが長ければ自分で取り外すことも出来ただろうに。
コンセントによって背中が壁にぴったりとくっつけられている間は身動きが出来ないのだ。
毎朝のことでも動けないこの時間は、すごくもどかしかった。
このまま無理やり引っ張ってしまえば…とも考えたりした。けれどそれで傷ついてしまったら困る。
彼女から貰った大切な身体なんだから。
もう、修理してくれることは、無いのだから。
だから彼の起床を一時間、じっと待つしかないのだ。その間考えるのは、いつも同じ。
もう彼がこのまま来なかったら私は。
動けないままずっと生かされるんじゃないか?
ずっと無駄な電力だけ吸いながら、ただじっと何もせずに。恐ろしくて仕方がなかった。
いつもいつもそんな想像に捕らわれた朝は苦しくって…。
「おはよう。」
そんな恐怖から救い出す、いつもの声。
いつの間にか彼は隣にいた。
カチッ。
と、コンセントを外す音がする。
「ありがとうございます。」
今日も無事に。
いつもと同じ、朝が来た。
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