記憶

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だけど。家路につこうと正門を出た瞬間、堰を切ったように止めどなく涙が溢れた。拭っても拭っても、涙は止まってくれなくて。 小雨が降りしきる中、傘もささず泣きながら帰った。 好きだったの。 本当に。 涙が止まらないのは、悲しいからじゃない。 胸が千切れそうに痛いのは、悲しいからじゃない。 私は、振られたことが悲しいわけじゃないのだ。 涙が止まらないのは、胸が千切れそうに痛いのは、行き場を失った郁人への想いが、まだ私の中で燻っているからだ。 ごめんと言われて、はいそうですか、なんて簡単に手放せるような想いじゃなかった。 その程度の想いじゃなかったの。 好きで好きで、たまらなかった。 だから、彼にこの想いを受け入れてほしかった。 これからどうしたらいいの。 まだこんなに好きなのに。 この想いを、どうすればいいの。
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