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記憶
「どうする?侵入した途端にセコム来たら」
「そりりゃあもう、猛ダッシュで逃げるしかないでしょ」
「もしくは健太だけ差し出して、その隙に他の人は逃げる」
「おい!やめろよな。連帯責任だからな!」
4月にしては冷えた空気に、4人の笑い声が響く。
「ちょっと!あんた達静かにしないと本当に誰か来ちゃうよ!」
祐子は騒ぎ続ける男子達を一喝した。怒られた彼らは一瞬静まった後、また笑い始める。
こら!と言いかける彼女をなだめ、先へ促す。
「まぁまぁ。久々に集まったから騒ぎ足りないんでしょ。放っといて先に行っとこう。それで本当にヤバくなったら健太を差し出そう」
「ちょっと。人の彼氏を犠牲にするのやめてよね」
ふふふっと笑い合い、歩みを進める。
目の前に、鉄の門が見える。私達は脱いだヒールを門の向こうへ投げ込み、続いて柵を乗り越えた。セコムは来てない。
「侵入成功」
祐子はニヤリと笑う。背後では酔っ払い達がガシャガシャと門を越える音が聞こえる。
「あいつら本当にうるさいねぇ」
「本当に22歳かねぇ」
笑い声を抑えながら投げ捨てたヒールを履き直している間に、彼らも追いついていた。
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