章タイトル無し

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 まんど……。  《マンドラゴラ》。それを引き抜き、男の悲鳴を聞いた者はほどなく死にゆく定め。  あなただって、聞いたじゃないですか? それなら、あなただって――。  私はこの古い桜の樹木に宿る精霊。気の毒ですが、死ぬのはあなた一人です。  不意に私の意識が遠のき始めた。  あなたの希望をうかがいます。  精霊が訊ねた。  桜の樹の下に埋もれるのを望みますか?  答える前に私は倒れ、意識を完全に失った。  やはり埋めて差し上げましょうね――。  精霊は、新しい屍体を見詰めながら、言った。  あなたは桜を愛していた。桜の根元に埋もれて、糧になるのがあなたにはふさわしい。そうでしょう?                                      〈了〉
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