伝える想いと真実

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「それにメール読んで気がついたの、結婚て当人同士のことだけど、それだけじゃないって。お互いの家族のことも関係するんだって」  おお周りに気を使うなんて……  気を使うなんて……  彼女なのに、娘の成長をみるみたいに嬉しいぞ。 「圭一郎さんのこともお兄ちゃんに紹介しないとね」  途端、気持ちが防御姿勢になる。そうか、僕も美恵の家族に会わなくてはならないんだ。お兄さんのことはちょっとずつ聞いてはいるが、どういう人物かは知らない。 「お兄さんってどんな人」 「優しいよ、いいお兄ちゃん」 ──まあ、美恵を育ててくれた人だから悪い人ではないだろう。たぶん大丈夫だよな。  落ち着いたところで今の状況を客観的に見れた。互いに納得している対面して正座している状態、今ならプロポーズをこちらからするタイミングではなかろうか。 「どうしたの」 「美恵」 真剣な顔と声で話しかける。美恵も空気を読んだようだ、身を硬くする。 「あらためて申し込む、僕と結婚してくれ」 そう言って頭を下げる、はにかみながら「よろしくおねがいします」なんて返してくれれば成功だ。 ──沈黙が長いな、オーケーの言い方に迷っているのかな。 「………………ごめんなさい」 …… ………… ………………はい? え? 聞き間違いかな? なにかこの場にそぐわない単語を聴いたような気がするが……。 「いったん断らせてください」 「ええええええぇぇぇぇ!!!!」 勢いよく頭を上げて美恵を凝視する。なんで、なんで、なんで!!  婚姻届まで用意して、署名までしてあるくらい乗り気だったよね、なんで、なんで、なんで!?  どんな顔をしているのか自分でも分からないが、美恵の慌てふためく様子を見て、よほど変な顔をしているなとは感じた。 「あのね、あのね、落ち着いて圭一郎さん、プロポーズは受けるわよもちろん、絶対。でも今は断らせて、お願いします」 「なんでだよ!!」 「わがままなのはわかってます、でもどうしてもイブの夜にプロポーズされたいの、それだけは小さい頃からの夢でどうしてもゆずれないの」 「どういうことだよ」 「だから絶対受けるから、次のイブの夜までプロポーズを待ってほしいの」  ──わけが分からなかった。土下座しながら必死でお願いする美恵に理由を訊ねるが、お願いしますの一点張りで話してくれなかった。  深呼吸して気を落ち着ける。昨夜のことで美恵とのつきあい方はかなり取扱注意なのが分かった。それでも結婚したいと思う。今は性急にこたえを求めない方がいいだろう。それに今日は平日で、出勤しなくてはならない。  とりあえずプロポーズは来年のイブにするという一年持ち越しとなり、その時はオーケーするという。  僕たちは仮婚約者状態でいるということで落ち着くことになった。
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