40人が本棚に入れています
本棚に追加
出会いはバニーガール
去年の年末、会社の忘年会をとあるホテルで行われた。
幹事は誰だったか思い出せないが、立食パーティでコンパニオンを呼んだのは間違いなく覚えている。なぜか? なぜならコンパニオンがバニーガールだったからだ。
「なんでまたバニーガールなんか呼ぶんでしょうね班長」
料理を取り分けて持ってきた部下の蓮池恋が、隣でぶつくさ言っていた。
「まあまあ、男子社員は喜んでいるし、女子社員も意外と喜んでいるじゃないか」
「そりゃまあ、生身のバニーガールを見る機会なんてそうそうありませんからね。被服メーカーとしては興味あるでしょう」
「蓮池さんは興味無いの」
「わたしは見飽きてますから」
「見飽きてるって何で……」
その時、ひとりのバニーガールに目が止まった。
ウサギ耳のカチューシャに白い襟、黒のレオタードに黒の網タイツ、手首には白の袖口そして赤のハイヒール。そのいでたちは他のコンパニオンと同じなのだが、なぜかその人だけはちがうと感じた。
「どうしたんですか──あー、やっぱりバニーさん見てる、班長もオトコなんですねぇ」
「いやちがう、いや見てはいるんだけど、なんかあのコだけちがう感じがしないか。なにがどうとは言えないけど、なんかこう、似合っているというか……」
正直うまく言葉にすることはできなかったが、たしかに何かがちがうと感じた。
するとそれを聞いた蓮池さんがまじまじと僕を見たあと、腕を取り彼女に向かって引っ張っていく。
「お、おい」
「み……じゃなかった、エミー、この人があんたに興味があるんだって」
え、なに、知り合いなの?
紹介された彼女はエミーといい、黒のセミロングヘアとくりっとした目の笑顔が印象的で、蓮池さんとは高校時代からの友達だった。
「この人、起さんといってあたしの上司なんだけど、あんたの身体に興味があるんだって」
「誤解を招くような言い方しないでくれ。失礼エミーさん、じつはあなただけ何というか他の人と違うような気がしてそれが何なのか考えてしました」
「へぇ~」
エミーは僕の顔をまじまじと見たあと、微笑んで話してくれた。
「じつはこの衣装、自前なんです」
「自前⁉ ご自分で作ったんですか」
「ええ、正確には支給された衣装を買い取って、自分にフィットするようにサイズ修整しました」
──ああ、それで他の人より似合ってたのか。それにしてもすごいな、自分のサイズを把握していて合わせることができるなんて。
これがきっかけでエミーこと美恵、三条美恵と知り合いとなったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!