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薪ストーブを囲むように座って、冷えた身体を温める。ミルクパンで温め直したカフェオレを、マグカップになみなみと注いで手渡した。
「これ、」
彼が差し出してきたのは、大きな紙袋だ。その中身が何であるかは、分かっている。
「今年も豪勢だね」
「……義理だよ。もうおじさんだし」
「何度だって言うけど、自分のこと『おじさん』って言うのはなしで」
紙袋のなかから、ひとつずつ取り出す。
上品なラッピングを施されたそれらは、どう見ても高級品ばかりで、俺は湧き上がる憎悪の念を必死で押し殺しながら、ひとつひとつ開封する。
この一日、彼はどんな顔をして、これらを受け取っていたのだろう。
きっと穏やかな微笑みを浮かべて「ありがとう」と言っただろう。
その笑顔にまた、チョコレートを渡した女の子たちは、胸をときめかせたかも知れない。
メッセージカード入りのチョコレートは三つだった。カードを差し出すと、彼はさらりと目を通した後、俺に返してくる。
「読んでもいいし、このまま捨ててもいい」
俺はにっこりと笑って、薪ストーブのドアを開けると、ゆらゆらと燃える炎のなかにそれらを放り込んだ。
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