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「……貴也さん」  名前を呼ばれ、貴也は我に返る。 「貴也さん、会いたかった」 伸びてきた両腕が、痛いほどの力強さで貴也の体を引き寄せる。貴也の髪に顔を埋めたまま、貴也さん、貴也さん、と繰り返すその声音は、まるで置き去りにされた子どものように淋しく心許なく、貴也の耳に響いてきた。 『でも俺は、絶対にあなたのことを忘れない』  四年前の健の言葉が、鮮やかに蘇る。その言葉の重みを、ようやくいまになって、貴也は胸を素手で握りしめられるような痛みとして味わっていた。 「……健、」  健は貴也の髪に頬ずりを繰り返す。 「健……、俺、お前のことなにも知らないなって思って」 「何でも教えるよ。俺も貴也さんのこと、全部知りたいよ」  顔を上げた健が、貴也の目を見据える。 「だから、……お願いだから、今度こそちゃんと俺と向き合って」  今にも泣き出しそうに震える瞳は、しかし貴也をしっかりと捉え続ける。強い意志を宿したその眼差しに、貴也はたまらず大きな息を漏らした。 「健……」  貴也の背中を、健が優しく撫でる。その手のひらのあたたかさに励まされながら、貴也は言葉を続けた。 「もっといろいろ話したい。健のことを知って、俺のことも知ってもらって、それから……」  必死で言葉を手繰り寄せ、貴也は続ける。 「……それからでしか、考えられないんだ」  貴也の言葉を噛みしめるように、健は深く頷いた。 「俺はかならずまた会えるって信じてたよ。でも、こんなにも早く会えるだなんて、思ってもみなかった」 「……」 「だからいま、こうして貴也さんがここにいてくれることが、それだけでもう言葉にならないくらい嬉しいんだ」  目を細めた健の、その声の優しさに胸が締め付けられる。 「……ありがとう」  掠れた声でそうつぶやいた貴也を、健がもう一度強く抱きしめる。 「貴也さん、好きだよ」  離れる間際、髪にやわらかなキスを落とされた。
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