エピソード2

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エピソード2

点滴が終わって、ナースコールを押して、 『点滴が終わりました。』と、告げると、はーい今行きますね?と、聞き慣れた声が聞こえてきたのは いつも、私の担当をしている 看護師(かんごし)宮守早苗(みやもりさなえ)さんが、病室の扉をノックして、失礼します。と言いながら 『桜ちゃん、大丈夫?顔色も良いから、大丈夫かな?』と、話しかけてきた。 私は、もう大丈夫です。と、ちょっとだけ嘘をついた。 まだ頭痛がするけど、これで、入院したら、また お母さんや妹の(らん)や弟の(いつき)にまで、迷惑かけてしまう。 お父さんは、仕事ばかりで、あまり家にいないし たまに、お父さんのこと忘れてしまいそうになる。 こんなこと、誰にも言えないし、 たまに、朝比奈先生が、お父さんなら良かったのにって考えてしまう。 お母さんが、帰る支度をしながら、会計を済ませてくるから、桜は、ゆっくりと、待っててと、言われて、 大人しく、待つことにした。 ぼんやりとしていたら、ふと人の気配を感じて 横を、ふと見たら、学校帰りに会った、あの男の人が、 私の横に座って、『桜、迎えにきたよ。ずっと探していたんだ。』と、微笑んでいる。 あの、誰ですか?わからないんですけど あの男の人は、悲しげな表情に、 『桜、忘れてしまったんだね。』と呟いた。 お母さんが、私に、気づいて、会計も、済ませたから、帰ろうか?と言いながら、私のカバンを持って 帰ろうとしてると、あの男の人が、また会おう。と 手を振っている。 お母さんに誰?あの男の人?と聞かれたけど、 私も、知らない人だから、わからない。って言うと 知らない人に、話しかけられても、話さないのよ?と言いながら、 お母さんが、乗ってきたファミリーカーに乗って 帰る途中で、あの男の人が、こちらを見ていた。 また会った。あの男の人に 私の名前を知っていた。誰なんだろう。 言い知れない不安な感じがして、モヤモヤしていた。
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