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四月二十日。
長い長い、春の時間が終わったわ。
この街の人達は言うの、街の真ん中にある大きな桜の木の下で告白をすると恋が実るって。今も昔も、その話は変わらない。
そんな――『私』からしたら、いい迷惑よね。
私はただ少し、他よりも長く生きているだけ。もう何回も咲いた花達は、今年もまた散ってしまい代わりと言わんばかりに青々とした若い草が生え始めていた。
繰り返してきた春も思い出も、何回目のものかはもうわからない。けどそれでいいじゃない。だって、私にとってここで起こる告白達は等しく、春の出来事なのだから。
けれども、今年はもう店じまい。
私はまた静かにここで、次の春が来るのを待つの。ゆっくりと、ゆっくりと。また必ず来る、暖かな恋のお話を夢見ながら。
三月三十一日。
またこの季節が、やってくる。
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