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四月七日。
今日はボロボロの国民服を着た彼女と、軍服を着た彼。
そう、そうなのね。なんだか見ているこっちも悲しい気持ちになってしまう。泣いている彼女をそっと抱き寄せる彼は、なんとも言えない表情で。嘘つき、素直になりなさいよ。本当は行きたくないって、離したくないって。
遠くから聞こえてる汽車の音に、二人は名残惜しそうにそっと離れ別々の道を歩き出す。
あぁ、やっぱり世界って、これだから残酷。
四月十日。
今年もそろそろ終わりかな、なんてそんな事を考えるとやってきたのは一人の少年で。近くにある高校の制服を着た彼は、何やら落ち着かない様子で周りを見ては頭を抱えて……ははん、さては告白かな?
そんな事を考えてると、案の定来たのは同じ学校の制服を着たショートヘアが良く似合う少女。向こうもこれから起こる事を察しているんだろう、それらしくどうしたの、なんて聞いて。ちょっといじわる。
対する彼は少し目を逸らしながらもすぐに彼女の目を見て、深呼吸をしている。
そんな緊張しなくてもあなたの気持ち、もう伝わってるわよ。だって彼女、嬉しそうだもの。
四月十五日。
もうすっかり来る人も減って緩やかな時間が流れる、そんな日。私もこんなに痩せ細っちゃった事だし、ようやく静かな日常がやって来ると思えばふらりと現れてのは、一人のスーツ姿の女性。目は真っ赤で、ハンカチも握って。可哀想、あなたの気持ちは実らなかったのね。
けど大丈夫よ、その悲しかった気持ちは、きっといつか咲かせる花の糧になるわ。
だから、泣かないで。
きっとこれからのあなたは、世界で一番綺麗だから。
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