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「おうっ、若葉! よく来たな! おまえにやって欲しい仕事はコレだ!」
笑顔でそう告げてきたパパが、目の前に置いたのは……。
なんと、ゆるキャラ『りゅっしー』の着ぐるみだった――
ニコニコと愛くるしい笑顔をした薄い緑色のドラゴン。
その大きな頭に自分の顔を並べたパパは、同じように満面の笑みを浮かべている。
いつもの私なら、ドンと胸を叩いて、
――そんなことなら若葉に任せなさい!
と、どんな頼みごとでも引き受けてしまうだろう。
……が、この時ばかりは事情が違っていた。
「ええええっ! こんなの聞いてない! ぜぇぇったいに嫌!!」
まるで火山が噴火したように、顔を真っ赤にして怒る私。
そんな私をなだめるように、パパが両手を合わせている。
「そう言うな、若葉! りゅっしーにはお前が一番合うと思ったんだ! 頼むよ!」
「ダメ! ぜったいにダメ! パパの頼みだからって、こればっかりはぜったいにやりません!!」
どうやらパパだけではなく、商店街の人たちはみんな私に淡い期待を寄せていたのだろう。
パパの後ろに集まっている彼らの表情からは落胆の色が感じられた。
生まれた頃からお世話になっている彼らの視線は、胸に突き刺さるような痛みを伴う。
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