紅の桜

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 実家と言われて少し焦ったが今日は誰もいないと言われてホッとする。こいつとは結婚するつもりはない。料理が美味いといろいろと便利だから付き合ってるだけ。だから周りにはこいつのことを言っていない。 「黙ってたもなにも去年は一緒にお花見しようって言われなかったし」  ……そうだったか?ああそういえば仕事仲間と友達と行って終わったっけ? 「あははは。そうだったか?悪かったな」  笑ってごまかす。仕方ないだろ。えーっとそれで何を話してたっけ?えーっとたしか…… 「桜の木の下に死体があるかどうかでしょ?意外と実話だと私は思うよ?」  俺の前にビニールに入ったビール缶を置いて彼女も座る。 「なんだよ。そんなにもあちこちに死体が埋まってるって言いたいのか?そんなこと言ったらここは墓場レベルに死体があるってことになるんだぞ?まさかこの桜の下にも死体が埋まってるとかないだろうな?」 「埋まってないし。そうじゃなくて。目に入る桜の木の数くらい人は誰かしらを殺したいって思ってるんじゃないかって言いたいの」 「な、なんだよ……物騒だな」 「そう?もしかしたら私に誰かが殺意を抱いているかもしれないじゃん……ねえ?」  俺を見てニヤッと笑う。その笑みに背筋がゾクリとする。 「お、俺はっ!お前にそんなこと思ったことないしっ!」 「ほんと?うれしいなー♪」  嫌な笑いから一転にぱっと満開の桜に負けない笑みが咲く。     
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