紅の桜

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紅の桜

 『桜の木の下には死体が埋まっている』  こんなことをどっかの作家がを言ったらしい。死体の血を吸い、白い桜は色づくんだと。  もしそれが本当ならば桜の木の下には死体だらけになるし、薄紅どころか深紅の桜が咲いても不思議じゃない。数本なら綺麗かもしれないが……。しかも桜はいたるところに植えられている。桜並木沿いの商店街、公園や学校、土手と大変な話だ。そこらじゅうを掘ればなんかしらの死体が出てくることになる。そんな訳、あるはずない。 「そんなこと信じるヤツ、いないだろうよ。おい、酒がないぞっ」  ケケケ、と笑い彼女が用意した料理を口に運ぶ。 「ん?なんかいつもよりしょっぱくないか?」 「ほんとー?気のせいじゃない?」  気のせいじゃないから言ってんだよ。ったく、自慢できることが料理しかないんだからきちんと作れよ。 「それにしてもこんな穴場、どうして今まで黙ってたんだよ」  眼の前には見事な桜の木が一本。何気なく「花見にでも行くか?」と言ったら「穴場を知ってる」と迎えに来た車に乗ってやってきた場所は彼女の実家だった。     
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