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彼女は、高校3年生という忙しい時期の春、つまり春休み明けに転校してきた。(後ほど聞くとそれは編入だったようだ)
その日は、朝からクラスが浮き足立っていて、なにごとかと思ったがそういうことだったのだ。僕が寝ていて聞いていなかったSHMで、担任の小林裕斗が説明していたらしい。
彼が転校生を紹介したときには、クラス中の男子いや、クラス全員が例外なく目を奪われた。それだけ、彼女は美しかったのだ。
膝まである金糸の髪はまるで傷んではおらず、さらさらと揺れている。陶器のような白い肌に黒い制服が映えており、形の良い真っ赤な唇が妙に艶めかしい。華奢な身体のプロポーションはもちろん抜群。エメラルドの目は大きく、鼻筋はスッと通っていた。
まるで、人として完成されているような。人間の考えつく美を凝縮したような。そう、人あらざる者であると言われた方がしっくりくるような、そんな少女であった。
「はじめまして。北郷マリナです。不慣れな点も多々あると思いますが、仲良くして下さると嬉しいです。宜しくお願いします。」
そして、一礼。彼女が話すだけで、教室の空気が澄み渡ったかのような錯覚を受ける。いつもうるさい教室も今だけは静かだった。そういう僕も少しの物音でさえ、出してはいけないような気がしていた。
「……あの……。」
いつまでたっても僕らが動かないからか彼女がおずおずといった様子で声をかける。そこでやっと裕斗先生も正気に戻ったようだ。
「……っ。ごめん、ごめん。皆、仲良くしろよ。北郷さんの席はえーっと。」
ここで、嫌な予感がする。なぜなら僕の隣の席は……。
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