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転校生
3年B組の教室。窓からはオレンジ色の光が差し込み、僕らを照らしている。運動部の声がガヤガヤと聞こえるが、それも気にならない。なぜなら数分前からずっと、隣から、
「ねねっ。ねねねねねねぇ。」
と、僕を呼ぶ声がエンドレスで聞こえてくるからだ。ちなみに勘違いしてもらっては困るが僕の名前は『ね』ではない。が、あまりにもうるさいので仕方なく返事をする。
「うるさいし。とりあえず陣でもかいとけって言ったはずなんだけど?」
すると隣からまた、
「ねねっ。ねねねねねねねねねねねねねねぇ。」
ねが2倍になって返ってくる。
「なに?」
「ねえ、優ちゃん。ここってどうかくの?」
と、記憶が正しければ5分前に説明したはずである、魔法陣のかき方を聞いてくる。それも、初級の。そして、このやり取りは既に7回は繰り返していた。この頭が馬鹿どころか機能していないと見える女。
膝下まである長い金色の髪に宝石のように輝くエメラルド色の瞳。明らかに異国の血がまじっているであろう彼女の名は北郷マリナ。見た目だけは近寄り難い美人。大事なことなので2回言おう。見た目だけは。
実は僕は、外見からは想像が出来ないほど中身がいろいろと破綻している彼女に魔法を教えている。どうして僕が魔法を教えることになったかというと。それは今年の春に遡る……。
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