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部長となら幸せに違いない。金も地位もある。
結婚式、驚くほど豪華で演出に力が入っていた。三回の色直し。和装もドレスも聖子にはよく似合う。ブライダルエステに通ったのか。細くなった首筋に浮く鎖骨が、やけに美しく見えた。
悠真はスマートフォンの写真フォルダを見返す。
白い歯を輝かせ、嬉しそうなたくさんの笑顔。夫に向けられる、赤く染まる頬。
彼女が幸せなら、それで良い。
そう割り切った。思い込んだ。言い聞かせた。
でも、やっぱり、だめだった。
悠真はエレベーターを降りると、早足で部屋の番号を見て回った。目的の数字と名前を見つけると、息を整え扉をノックする。
清潔な個室。真白い陽光がたっぷり入る淡い部屋で、彼女はベッドに守られていた。
県内でも腕利きの医師が集まる大学病院。
想い人は末期のガンに侵されていた。
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