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「主人が葬儀会社に務めていると、その後の心配をしなくて良いわね」
寝耳に水とはこのことか。
部長から葬儀の生前見積りを取って欲しいと連絡が来た。深刻な声色に何だろうと話を聞くと、天国聖子の式だと言う。
会社で仲の良かった、悠真に見積りを作って欲しい。彼女の希望を叶えるために、部長は伏せていた事実を話し出した。
二年前、リーダーの重圧から体を壊し、胃ガンを発症。聖子は周りに心配をかけないよう水面下で手術に望んだ。胃の半分を切除し、命は助かったが、再発。病巣が見つかった。
転移の発見は結婚式の数日後。膵臓の大半が侵されていた。骨やリンパ節にもガンが見つかり、手をつけられない状態で。
告げられたのは、無慈悲な余命宣告。あと数ヵ月という短い命の炎。
二年前、大きな企画が済んだから、海外に行くのだと長期休暇を取っていた。手術入院のカモフラージュ。
結婚式で痩せて綺麗になったと思っていた。違う。体調が悪く、まともに食べれずにいたのだ。
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