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 止まらない、止まらない。  つらいのは自分自身で。溢れ出るのは、不満を相手にぶつけて、心を安定させようとか、そんな汚い感情ばかり。  涙と鼻水で汚れた手。制服が濡れていく。  どうして彼女は死ぬのだろう、と悠真は考える。  何も悪いことはしていない。彼女は幸せになるのだ。楽しい新婚生活、明るい食卓、子どもだって。部長となら何不自由ない暮らしが送れるのに。  病気が全べてを奪う。何てひどい。こんなことがあって良いのか。  聖子は悠真が落ち着くまで、頭をなで続けた。母親が、恋人がそうするように、ひたすら優しく、慈愛に満ちた温かな掌で、そっと触れる。 「あのね、遠藤くんに他にもお願いがあるの」  彼が泣き止むのを確認し、彼女は引き出しを開けた。真っ白な綿の手袋。式の時に着用する、会社からの至急品だ。 「私のお葬式の担当者になって欲しいの」  差し出される聖子の手袋。仕事を続ける者へのバトンにも、少し早い形見分けにも思えた。
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