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「本当に、ごめんね」 「止めてください。僕、いじめっこみたいじゃないですか」  「うん。……うん。ありがとう」  聖子は眉を下げて、綺麗に笑った。  病室で聖子と話したのはそれが最初で最後。  気を遣わせたくない一心で、見舞いには行かなかった。体調が悪いのに無理して笑うのは苦しいに違いない。弱っていく姿を直視する勇気を、悠真は持てずにいた。  冷たい皮膚に触れて、思う。  亡くなり、血の通わない指先はこんなにも冷たい。こうなる前に少しでも話をして、言葉を交換していれば、何か変わったのだろうか。  止めよう。後の祭りだ。  悠真は前を向く。聖子の願いを叶えるために。自分の心を整理するために。白手袋を手に、静かに決意する。  さあ、開式に向けて、動き出そう。
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